落雷 - Wikipedia
落雷(らくらい)とは、帯電した積乱雲などと、主に地上物の間に発生する放電で、自然現象又は自然災害である雷の代表的な形態である。
落雷とは、地面、水面、あるいはこれらの上もしくは空中にある物体に雷の放電を被ることである。結果、被害が発生した場合、一般には災害(天災)と認識される。時にこれは深刻、甚大なものとなり、死亡あるいは建物火災等の原因となる。
落雷時の電圧は200万~10億ボルト、電流は1千~20万、時に50万アンペアにも達する。この大電圧と大電流が、人を死傷させ、この大電流によってもたらされる、プラズマが発生するほどの熱(ジュール熱)が、建物などに被害を発生させる主因であるが、この大電流そのもの、もしくはこの大電流により発生する強烈な電磁界、また蓄積された電荷による電気・機械・通信設備や装置などの損傷、さらにこれらの損傷により生じた二次的な被害等も落雷による被害とされる。
なお落雷の電力を電源として利用することは極めて困難である。過去、北朝鮮などで試みられているが全て失敗している。これは落雷のエネルギーは大きいものの、それがあまりに短時間に集中するため、二次電池やコンデンサなどに蓄電させることができないためである。
地球上では毎秒約100もの落雷が起こっていると推定されている。わかっている範囲で、日本では年平均約20人、世界では約千人が落雷による直接被害に遭い、被害者の30%が死亡している。
[編集] 落雷の生じ方
詳細は「雷」を参照
落雷とは、雲の中の氷の粒が雲中の対流等により衝突、摩擦を生じ、それによって静電気同様に帯電、溜まった電荷がその状態解消のため、地面・水面及び地上物等に対して電荷の放出=放電を生じるものである。なお雲の中や他の雲との間で放電が生じるものは「雲放電」「雲中放電」或いは「雲間放電」と呼ばれる。
空気の絶縁を破壊、放電が生じる程に電荷が蓄積するには雲中の対流運動等の激しさが条件になるため、積乱雲の直下や温暖前線・寒冷前線の通過時などに落雷が発生することが多い。こと黒くみえる雲は、その密度と厚さが大きく、かつ活発であることが多く、概ね落雷の危険性を予見できる。
諺「青天(晴天)の霹靂」の霹靂とは落雷のことであるが、こういった予見が出来るからこそ、逆に前触れの無い突拍子も無い事の例えになったと言える。
落雷時、稲妻は少し進んでは暫し停止、それから再び少し進むことを繰り返す。つまり「ステップを踏む」ように進むことから稲妻は複雑な曲線を描く。マンガ表現に限らず「雷文」と呼ばれる文様(モチーフ)でも、雷の表現として直線と急激に折れ曲がった角が連続したギザギザの、いわゆる「稲妻型」が見られるが、このような形の稲妻は実際には存在しない。なお稲妻が1回に進む距離をステップ長といい、約20-50mほどである。
そして稲妻が地面や木などに落雷する直前の停止位置に達すると、落雷場所の地面や木などから、上昇リーダーと呼ばれる迎え放電が発生、これが結合して落雷となる。稲妻の最終ステップ長と、上昇リーダー長の和を雷撃距離と呼ぶ。電撃距離はおよそ20-200mである。
よく雷は「周囲で最も高いものに落ちる。」といわれるが、実際には、落雷直前の稲妻停止位置を中心とし、雷撃距離を半径とする球内にある最も近いところに落ちる。高いものに落ちる確率が高いのは、稲妻の最終停止位置と高いものとの距離が、雷撃距離以内になる確率が高いためである。 これは落雷電流が最も導電しやすい経路に集中することに関係する。
このことから、高いものの近傍に落雷する確率は低くなる。しかし実際の雷雲の電荷蓄積範囲は広く、その防護範囲、すなわち落雷の起きない範囲はさほどには大きくならない。また電荷蓄積範囲は雷雲の広がりよりも広くなるため、落雷は雷雲下のみならず、雷雲の周辺までも含め、広範囲に不規則に発生する性質がある。
[編集] 落雷による被害
落雷の被害は、雷電流によってもたらされる。電流発生メカニズムの違いによって、直撃雷、誘導雷によるものに大別される。電流の大きな直撃雷のほうが、より深刻と考えられがちであるが、実際には人、物ともにどちらでも深刻な被害が発生し、ケースバイケースである。分類は落雷被害防止対策上、必要なものになる。
- 直撃雷
- 雷雲から物体に直接放電が生じ、雷電流(直撃電流)が流れるもの。直撃を受けた物体の近傍にある別の物体に再放電を生じて電流が流れた場合、これをさらに側撃雷という。
- 誘導雷
- 直撃電流の電磁誘導作用によって誘導電流が流れるもの、また雷雲に蓄積された電荷変動によって、地面側に蓄積されていた逆電荷が電流になるものをいう。
[編集] 人的被害
主に感電である。1994年-2003年の統計(警察白書)によると、日本での落雷による年平均被害者数は20人、うち死亡者数は13.8人であり、被害者の70%が死亡している。
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- 野外でのスポーツ(ゴルフなど)や作業中、また危険な場所での雨宿り中に落雷を受け、死亡することが多い。直撃雷によるもののみならず、近傍への落雷により大地に発生した電位勾配によって発生する電流、金属製の手すりなどに誘導される電流、すなわち誘導雷によっても事故は発生する。1967年には西穂高岳で高校の登山パーティーが落雷を受け、多数が死傷する事故が発生している(西穂高岳落雷遭難事故)。
- 雷は高所、また背の高いものに落ちやすいが、条件が揃えば平地、低いところにも落ちる。海、サッカースタジアムのフィールド、ゴルフコースに落ちた例もある。すなわち雷はどこにでも落ちるので、屋外ではどこに居ても雷にうたれる可能性がある。
- 避雷対策のなされていない建物内では、電化製品や電気を通すものを介して感電することがある。ひどい場合には、電化製品などが吹っ飛び、破片などに当たって死傷することもある。またこれらから出火した場合、火事になり巻き込まれることがある。
- その他、感電せずとも強烈な光や音によるショックで失神したり、稲妻周辺で急激に膨張する空気の作用によって吹き飛ばされ、死傷することがある。またPTSDを起こすこともある。
[編集] 物的被害
2002年時点で、日本での年間被害総額は1000億円から2000億円と推定されている[1]。ちょっとした機器の故障から火災まで多様、数多く発生し、詳しくは把握されていないが、ある保険会社のデータによると、年間の被害件数はその保険会社の取扱い分だけで、2万件を超えるという[2]。
- 電気設備等の被害
雷サージによる。
- 送変電施設などへの落雷による停電、通信施設などへの落雷による通信ダウンなどがある。施設被害に加え、停電、通信サービスの停止による収入減などの間接被害が発生する。
- 家電製品などの損傷がある。ときにこれは修理不能になるほどのダメージを受けることがある。特にパソコンなどの電子機器は雷の影響を受けやすい。直接の被害のみならず、電気機器を使用できなくなったことによる間接被害が発生する。
- 特に一般家庭などの場合、適切な雷対策がなされていない場合、例えばブレーカがあっても、ブレーカそのものが雷サージに耐え切れず、火災に至ることがある。JIS、JEC等によりブレーカのサージ耐力基準が定められてはいるが、技術的限界より、単体として雷サージに完全に耐えられるものとはされていない。
- 落雷の可能性があるとき、ブレーカをあらかじめOFFにすることは、ブレーカをOFFにしないことよりも家電製品などの防護について有効なものとはなるが、JIS等に規定されている適切な「避雷システム」がない、すなわち避雷器(SPD)や接地との適切な組み合わせがなされていない場合、たとえブレーカをOFFにしてもこれを飛び越し、雷サージが家電製品などに流れ込む可能性はおよそ30%もある[3][4]。
- 建物被害
- 避雷対策のなされていない建物などに直撃雷を受けると火災になることがある。建物に直接ではなくその近傍に落雷しても、屋根、壁、窓ガラスなどが破損することがある。その結果、二次的に怪我などの人的被害を招くことがある。
- 石などの割れ目にたまった水や木材などが電路となり、内部の水が水蒸気爆発を起こして割れる・避けるなどを起こすことがあり、木材やゴム等の絶縁材など可燃物があれば火災に至ることがある。
- その他
- 生きている木でも、乾燥した天気が続いた場合は内部の水分が少なくなり、落雷により発火することがある。周囲にも木がある場合、大規模な山火事などともなる。
[編集] 落雷からの人身防護
「雷検知器」も参照
2005年時点の世界平均では、全被害者のうち死亡者は30(%)とされている[5]。しかし日本では被害者の70%が死亡している。すなわち日本の落雷事故による死亡率は異常に高い。これは日本の事故実態として、ほとんどが屋外で危険な木の下などで雨宿りをしていて側撃雷にやられており、直撃雷による死亡率、すなわち約80%とあまり差が出ないことによる[6]。日本の場合、被害のおよそ全数を把握する体制・システムはないので、数字としてあらわれてこない軽傷事故がどのくらいあるのか不明であるが、日本ではこの事故実態と高い死亡率より、専門家の間で国民一般に対する防雷意識の啓蒙が叫ばれている。ちなみに米国では2008年現在のデータで、年平均被害者数400名、死亡者数62名であり、死亡率は15.5(%)と低い[7]。なお警察白書にある数字で、日本における死亡リスクとして観ると、2000年時点で航空機事故を1とするならば、落雷による死亡リスクは0.66、癌による死亡リスクの約5万分の1である[8]。
ヒトの危険回避プロセスは「認知」「判断」「行動」であるが、雷は、ヒトの五感で直接、危険性を認知するのに限界があり、従って後の判断と行動に誤りが生じやすい。そのためこれを補助する「予報」「警報」が重要になる。
かつて雷の詳細な予報は困難であり、天気予報においても雷注意報などで注意を呼びかけるにとどまっていた。しかしその後の雷観測技術の飛躍的な進歩により、日本の気象庁は2010年5月27日から、落雷を予報する「雷ナウキャスト」を開始するに至った。これは、日本全国を精度1000m四方、60分先まで10分刻みの局地落雷予測を行うものである[9][10]。また、日本の電力会社各社[11]や民間[12]でも、独自に雷雲や落雷の観測システムを持っている。
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しかし雷観測技術が進歩し、雷の性質や挙動が次々に解明された結果、雷からの人身防護として最も確実なのは、雷注意報が出ているときは屋外に出ないことである[13][14]という、昔から経験的に知られていたことが改めて明らかになった。アメリカ海洋大気局(NOAA)では、2010年5月現在、「When Thunder Roars, Go Indoors!」(日本語で「雷が近づいたら、建物の中へ入れ!!」)をスローガンとし、広く米国民に人的落雷被害防止を呼びかけている[7]。2010年5月31日には、アメリカ合衆国のバラク・オバマ大統領が、雷雨の中、全米国民に向けて雷からの人身防護を呼びかけた[7]。
雷は極めて局地的な気象現象であるのに「雷注意報」は広域かつ長時間に渡って発令されることが多く、これにいちいち従って避難していたのでは何もできないという現実的要求から、十分な時間的余裕をもって確実にピンポイントで「落雷警報」を出すためのものとしての雷観測手段、すなわち雷検知器が人身防護用ツールの「切り札」として期待されたのであるが、皮肉にもそのための大規模な雷観測と研究がすすめられた結果、それは技術的にではなく「雷の挙動」により困難であることが明らかになり、雷ナウキャストなどの「システム」として構築されるに至った。
雷の挙動は速く、雷雲の形成開始より、わずか10分程度で落雷に至ることもあれば、数十キロメートルの範囲で同時に落雷する、さらに前線に伴うものなどでは、同時刻に落雷の起きる範囲が数百キロメートルといったことも珍しくない。このため、たとえ1000km、あるいはそれ以上の範囲で生じる稲妻探知能力を有する雷検知器を用いて観測を行っても、落雷を確実に予測できるものにはならず、まして数十キロメートル程度の範囲の稲妻探知能力しかない簡易型落雷警報機などはこの場合、単体では役に立たないものとなる[15][16][17]。これをおぎなうことができるのは、気象レーダーによる雨雲観測、あるいはその場に固定設置する電荷検出型雷検知器などになるが、雷雲の形成開始よりわずか10分程度で落雷に至ることがある以上、ピンポイントで「落雷警報」が出せるのはせいぜい10分前であり、人身防護の点で、確実には雷注意報に従うしかない。2010年9月23日、千葉県で起きた落雷事故において、気象庁の雷ナウキャストの「警報」にあたる「活動度2」以上は、間に合っていない[18]。しかし発令されていた雷注意報は正しく、雷ナウキャストの「活動度1」も正確であった。
屋外にはどこにも安全な場所はなく[19]、よって建物内などに直ちに避難することができない、あるいはそれが予想される場所に出かけるときには、天気予報に十分注意し、雷の恐れのあるときには出かけるのをはじめから控える。
[編集] 具体的な回避方法
以下、雷に遭遇した場合の退避方法について述べる。安全な場所はファラデーケージ内のみである。万一、どこにも逃げるところがない場合には「「突起物」から十分に離れ、「突起物」よりも必ず自分が十分に低くなるようにし、加えてできるだけ両足を揃えて身を低くし、手で耳を覆って雷雲をやり過ごす」方法があるが[20]、これはもはや最終手段であり、落雷の危険を効果的に回避できるものとはならない[21]。
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- 雷鳴が聞こえたら即、避難
- 雷鳴が聞こえる距離は稲妻より10km程度である。しかし雷雲の広がりはそれ以上であることがよくあり、雷雲の辺縁から10㎞以上離れた場所にも落雷は生じる。従って雷鳴が少しでも聞こえたら、すでに落雷の起きる危険な場所にいることになり、直ちに避難する必要がある。雷雲は急速に発達するため、雷鳴が聞こえてからでは既に遅いことがある。従って遠くに少しでも黒雲などが見えたら、雷光・雷鳴を認める前に、直ちに避難を開始するのが賢明である。ただし冬季の雷雲は雲頂高度が低いことから黒雲として認識できないことが多く、またその稲妻の発生は雲放電ではなく対地放電より始まることが多い(すなわち「突発的な落雷」である。)ことから、気象庁の提供している「レーダー・ナウキャスト(降水・雷・竜巻 )」などで稲妻の発生のみならず、雨雲(雪雲)の接近状況まで含めて随時確認するのがよい。(「国土交通省防災情報提供センター」のウェブサイトで携帯電話でも閲覧可能。)なお、雷光と雷鳴の時間差を計るのは無意味である。これで判るのは単に今、発生した稲妻までの距離だけであり、落雷の危険性を判断する材料にはならない。
- 鉄筋コンクリート建築物・戸建て住宅などの本格的木造建築物に避難する
- 雷電流が外壁などの構造材を伝っていくため安全である。ただし、以下の事項に注意する必要がある。壁・柱・天井などから1メートル程度、距離を置く(故に軒先や小さい東屋などは安全ではない)。アンテナのような屋外の被雷しやすいものにつながっているテレビなどからは離れたほうがよい(2メートル以上)。電気機器・有線の電話などからも同様に離れたほうがよい(電話をかける必要があるときは、携帯電話やワイヤレス電話子機を使用するのが安全)。また雷電流が水道管・ガス管を伝うことがあるので、なるべく洗面所、浴室、キッチン等の使用を中止し、近寄らない。なお公園などにある屋根付きの壁のない簡単な休憩所に避難し、これに落雷した場合、柱に近い位置に居ると屋根から柱を伝ってきた雷電流に� ��び移られて感電するため、こういった建物への避難は危険である。
- 自動車・電車など周囲が全て金属で囲まれている乗り物に避難する
- 自家用車車内など乗り物の内部は比較的安全である。全周を金属で囲われている格好となり、落雷してもこの金属部分を雷電流が通るため内部への影響は少ない。ただし、ハンドル、車体、またカーラジオなどの電装機器類には触れないほうが無難である。また落雷によって火災が発生する可能性があり、運転中であればショックで事故等を起こす可能性もある。
- 洞窟、トンネルなどがある場合にはその中に避難する
- 地下は安全である。ただし地上から引き込まれている電線や水道管・ガス管などを伝って雷電流が侵入してくることがあるので、これらがある場合には、建物に避難した場合と同様の対応が必要である。入口付近に避難しないこと。また、雷に雨はつきものなので、浸水には十分な注意が必要である。
- 「高い木の下にいれば安全」は誤った俗説であり、かえって危険である
- 落雷は高率で高い木に生じる。このとき木は雷電流ルートになるが木の電気抵抗が高いため、その下、すなわち高い木のすぐそばに人が居ると、雷電流はほぼ導体である人体に分流する。これを側撃といい、高い木の幹近くに入ることは危険性をむしろ増すことになる。この俗説と雷雲と同時に起きた雨を避けるため雨宿りに木の下に入り、被災するケースは少なくない。
- 一方で、高い木を「避雷針」とする回避方法がある。すなわち、高い木によって得られる防護エリアを利用する方法である。具体的には、木の枝葉を含めて高い木から4m以上離れ、かつ、木の先端を45度の角度で見上げる範囲までに避難するものである。なお避難したところではしゃがんで、両足をできるだけ閉じる(落雷により地面を流れる電流が人体に分流するのを最小で済ませるため。うつ伏せはこの逆となるため危険)のがよいとされる。しかし実際にはこの方法は簡単ではない。これは木の場合、計算して作られた避雷針のようにはならず、木の枝や根の広がり、さらにはその場所の大地抵抗などによって、形成される保護エリアがまちまちになるためである。また、落雷によって木が倒壊した場合、その下敷きになる可能性� �ある。NOAAでは全く推奨しておらず、十分に離れるように言っている[22]。すなわち、落雷の危険を減じるだけのものにしかならないことを忘れてはならない。また高い木のみならず、避雷針のある高い鉄塔なども利用できるが、後述のように避雷針は落雷被害を完全に防ぐものではない。
- 「金属を身につけていると落ちやすい」「ゴム長靴、雨合羽を着用していると落ちにくい」は誤った俗説であり、落雷に遭う確率に差はない
- 以前は金属製品を身につけていないほうが落ちにくいとされていたが、近年、差のないことが明らかになった。これは雷の巨大な電圧からすれば、人体はおよそ導体に等しくなるためである。同様に「絶縁体」であるゴム長靴、雨合羽なども、数百メートル以上の空気の絶縁を破る程の雷の巨大な電圧からすれば、数ミリ~数センチの絶縁物など無いも同然であり、これらを着用していても関係ない。なお金属製品については逆に、身につけていると助かることがある。ただしこれは、人体よりも金属製品の電気抵抗が十分に低く、雷電流の大部分が金属製品のほうに分流し、人体の重要臓器を経由しない「幸運な場合」に限られる。
- 傘はなるべく使わない。自分の頭より高い位置に何かを掲げない
- 雷はより高く、細いところに落ちやすいため、傘を差す差さないのほんのわずかな違いが生死を分けることがある。釣竿、ピッケルなども同様である。
なお落雷からの人身防護用に、雷雲の発達・接近を警告する携帯型の雷警報機も市販されているが、携帯型雷検知器の距離表示自体を避難の目安に使うことについては、雷検知器製造メーカーや専門家が、否定的な見解を示している[23]。
[編集] 建物・機器の落雷対策
日本での落雷数は、8月には100万回を超える[24]。家電製品などの雷被害は非常に多く、日本では少なくとも年間、数万件の被害が発生していることがわかってきた。このため日本では特に建物・機器の雷対策が欧米の雷対策先進国よりも「遅れている」と言われるようになったが、事情は複雑である。日本の場合、建物・機器の落雷被害は今日、「人災」であることが多い[25]。
日本の建物・機器に関する本格的な雷対策技術は半世紀以上も前より世界トップレベルにある。2010年現在、完全に被害を無くすことはまだできないが、理論的・技術的に相当なレベルまで被害を無くすことが可能になっている。例えば、日本の危険物施設などで実施されている雷対策は十分な成果を挙げ続けており、小さな機器故障などはあるが、落雷による油タンク火災を例にすると、いまだ世界の油タンク火災が、圧倒的に落雷により発生しているのに対し、日本では統計のある1962年以降、落雷により発生した火災はわずか2件、最後の事故は1987年であり、以降、雷による事故報告は1件もない。これは日本全国に無数にあるガソリンスタンドなども含んだ数字である[26]。世界中で主力となっている酸化亜鉛型避雷器(MOV)も日本で発明されたものである。
しかしこれとは対照的に日本の場合、一般への雷対策普及は遅々として進まず、年間、少なくとも数万件、数千億円の被害が発生し続けている現実がある。これも以前から専門家の間で、日本では「官民ともに一般の防雷意識が低い」ためであると指摘され続けてきた。事実、電気設備数として最も数多い日本の一般家庭には電源用避雷器すら普及しておらず、2006年時点でその普及率はわずか1~2%程度である[27]。これは火災防止上、強制力を持って一般家庭への避雷器設置が進められている欧米諸国と比べると、桁違いに低い数字であり、日本では、現行の内線規程にあるちょっとした対策を講じるだけでも統計上、80%以上防止できる[28]一般住宅の雷被害が無対策がゆえに年間、数万件も発生し続け、莫大な損失を出し続けているということになる。
この極端ともいえる差を生みだしている、意識の低さの原因については多くの意見があり、例えば「がまん強い国民性」があり、被雷して死亡してもそのまま諦める、すなわち雷被害を「天罰」などとして諦めてしまう、あるいは、安全は他者によってもたらされるものであり、自分で獲得するものではないという考えがあり、雷についても自分で安全を獲得しなければならない対象としてみなされていない[29][30]といったものであるが、事実、日本の場合、欧米の雷対策先進国と異なり、JISなどによりいくつかの基準は定められていても、危険物施設などのごく一部の例外を除き、一般について雷対策を行わないことに対する罰則や行政処分などはおよそなく、また雷対策に携わる者の専門資格制度もない。結果、せいぜい死亡あるいは重傷事故が起こってから法廷で管理者責任の有無などについて争われる程度である。つまり日本には、半世紀を経ても一般に雷対策技術が普及しない「負の実績」がある上、今後の法的規制の期待もできず、よって今後、一般への意識普及を待ち、たとえそれが普及したとしても、まず被害を減ずるものにはならないであろうというネガティブな見込みから、「最善を尽くし、可能な限り被害を 防ぐ」のではなく、「どの程度までの被害ならば許容でき、そのためにどの程度の費用をかけるか」を「定量化」、すなわち「費用対効果」で一般に提案する必要があると指摘され[31]、今日、一般向けにその方向での検討と対策がなされるようになっている。すなわち日本の実績ある雷対策技術をもってすれば、雷被害を消費者の希望する想定の範囲に収めることができるので、普及に役立つというものである。なお「費用対効果」の勘案については火災保険金等による補償も含まれる。
しかし雷被害を完全に「想定の範囲内」にすることはいまだ困難、たとえ最善を尽くしても「想定外の事故」が起こること、よって「定量化」の根拠も曖昧、また建物、機器の被害が直接、間接に人的被害につながらないという保証は全くなく、特に建物は雷発生時、避難場所になるところであり「カネが第一、わかっているのにやらないことになる」この動きに対して反対する専門家や業者は多い。これは、雷対策機器やシステムの能力不足等により損害が発生しても、日本では法的にベンダーの責任の有無が判断されることがなく、全てユーザーの責任、よって技術的には可能なのに、ユーザーの所望ではじめから損害が生じることがわかっているものを納入し、いざ損害が発生し、それが「所定の範囲にならなかった」と「ユーザ� ��に判断」された場合、ベンダーに抗弁の余地はなく、信用を失墜するだけの結果になることを嫌うためでもある。
また、火災保険(火災保険に特約として雷保険が付けられていることが多い。)等による補償も、今日その多くは、雷による被害であることを被害者側で立証する必要があるようになっている[32]。一方で一般住宅などの雷対策や雷保険加入があたかも「強制」であるかのように言う勧誘なども出現し、雷対策業者などに直接、相談が寄せられている実態にも注意が必要である[33]。火災保険との「セット商品」となっているものはあっても、日本では雷保険加入はあくまでも任意である。
建物・機器の落雷対策はいわゆる「総合技術」であり、携わる技術者にはおよそ気象学にはじまり、電気工学、電子工学、通信工学、機械工学、化学工学、建築工学、土木工学といったところまでの広い専門知識が要求される。このことから日本雷保護システム工業会(JLPA)は、一般への広報と併せ、不足している専門技術者の育成を図り、雷保護製品等の品質、性能等について社会的信頼性の向上を図るといった活動をおこなっている[34]。
以下、建物・機器の雷対策に用いられる主なものを挙げる。
[編集] 避雷針
詳細は「避雷針」を参照
落雷の原理として、地面と上空との電位差から生じることがわかっている。このことから適切な位置に避雷針を設置して空中放電し、建物・機器に影響が及びにくいように導雷するとともに、あらかじめ地面と上空との電位差を軽減するという処置がとられる。建築基準法33条では、「高さ20メートルをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない。ただし、周囲の状況によつて安全上支障がない場合においては、この限りでない。」と定められている[35]。
避雷針には保護範囲があり、その範囲外にあるものは保護できない。JIS A 4201では、規定の「保護角」や「回転球体」などを用いて、範囲を定めるものとしている。国会議事堂やその他文化財のように長い、または高い形状の建物の場合、避雷針では十分な保護範囲が得られない場合もあり、棟上げ導体などを使用して広い保護範囲を得る事も行われている。また、雷ストリーマを発生させて保護範囲を広くしたものなど[36]、現在も新たな避雷針の開発が進んでいる。
しかし、この避雷針も雷の被害を完全に防ぐものではなく、通常の避雷針をビル等に設置した場合、設置位置によっては避雷針ではなく建物の角に落雷することもあるほか、避雷針の保護範囲に入っていても雷の直撃を受けることがある[37]。このため、他の方法を組み合わせることがJIS A 4201などで規定されている。
[編集] 雷サージ対策
詳細は「サージ防護機器」、「避雷器」、および「保安器」を参照
雷サージによる家電製品やPC等の被害を軽減するための方法として、2003年に、建物に適切な接地と等電位化を行い、電気・電話線には適切に避雷器を設置することなどがJIS A 4201・JIS Z 9290-4などで規定された。また、電話線・CATV等には保安器の設置が別途、義務付けられている。サージプロテクタというコンセント型の器具も販売されているが、単体使用するとかえって危険なこともある。
これらの対策をとってなお、家庭などにおいて雷サージによる家電製品やPC等の故障を防ぐためには、雷の時は電源ケーブルや電話線をコンセントから抜いておく事が望ましいとされる。また制御用雷検知器を用いて、この電源開放を自動で行う装置も販売されている[38]。
[編集] その他の落雷対策
ここでは、現在研究中のものを示す。いずれも、雷放電自体を起こさなくするものではない。
- 雷ストリーマによる誘雷
- 雷ストリーマによる誘雷に適した形状(小形放電電極と下部集電電極)をした避雷針などに、予め別途回路により雷ストリーマを発生させておき雷を誘導する方法である。
- レーザー誘雷
- 雷雲に向けて強力なパルスレーザーを当てて稲妻の通り道となるプラズマを発生させ、稲妻を安全な場所へ誘導することが可能である事が実験で実証されている。送電線鉄塔への落雷が原因の停電を防止する手段として期待されている[39]。
- ロケットによる誘雷、消雷
- ロケットに電線を繋げて打ち上げ、雲の上下に生じた電位差を電線を通じて放電する事により落雷を防ぐ。電線はジュール熱によって蒸発する[40][41]。
- その他
- 「消雷装置」という、雷放電が落雷になりにくくする研究もなされ、特許も取得されているが、いまだ研究途上である。
[編集] 落雷実験
日本工業大学の超高圧放電研究センターでは300万ボルトインパルス電圧発生装置による人工的な落雷実験が行われている[42]。 電力中央研究所の電力技術研究所塩原実験場では、1200万ボルトインパルス電圧発生装置で実験が行われている[43]。
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